環境 TCFD

TCFDへの対応

リコーリースグループは、気候変動を含む環境課題への対応を重要な経営課題の⼀つと認識し、マテリアリティとして、「クリーンな地球環境をつくる」を掲げ、「気候変動の緩和と適応」「資源循環」に取り組んでいます。
当社グループでは2019年8⽉に気候関連財務情報開⽰タスクフォース(以下、「TCFD」)への賛同を表明し、2020年度は賛同企業や⾦融機関が議論する場であるTCFDコンソーシアムに加盟しました。TCFD提⾔に基づいて、気候変動が当社グループの事業に与えるリスク・機会を分析して経営戦略・リスクマネジメントに反映するとともに、適切な情報開⽰を進めていきます。

TCFDのロゴ
TCFDコンソーシアムのロゴ

ガバナンス

これまで当社グループの「リスクマネジメント委員会」にて、財務上のリスク評価・予防計画の策定後、経営会議において、経営判断がなされてきました。2020年4⽉には、気候変動関連課題に関する責任委員会となる「サステナビリティ委員会」を設置しました。当委員会はサステナビリティ推進担当役員を委員⻑とし、常務執⾏役員以上およびサステナビリティ・ESG課題に直⾯する本部⻑により構成されています。四半期に⼀度開催され、議論するテーマに応じて事業部⾨の責任者を招集し、サステナビリティ課題を中⻑期的な視点で横断的に検討・議論しています。気候変動リスク項⽬の⾒直しやリスクおよび機会のアセスメントを⾏い、その結果が中期経営計画に事業戦略として組み込まれ、各事業年度の⽬標に反映されています。

戦略

脱炭素社会への移⾏や気候変動に伴う異常気象の増加により、当社のお客様のビジネスに影響が及ぶリスクが想定されます。近年わが国において気候変動に起因する⾃然災害が頻発していることを踏まえ、⾃社の事業のうち、気候変動による財務影響が懸念される5分類について定性的シナリオ分析を実施しました。その結果、事業への影響度が⼤きいと特定した項⽬について定量的に分析し、財務影響額を概算しました。

1.5℃シナリオ※1

気候変動に対し厳しい対策が取られ、気温上昇が1.5℃程度に抑制されるシナリオ。

4℃シナリオ※1

気候変動への対策が取られず、4℃程度気温が上昇するシナリオ。

  • リース資産(事務機器※2、自動車、産業機械)
  • 太陽光発電
  • 住宅賃貸
  • ※1
    定性分析の結果、4℃シナリオにおける物理的リスク(洪⽔、⾼潮、気温上昇などによる毀損に対する影響)については、当社事業への影響は少ないとの判断のもとに定量化分析は⾏っていません。
    インパクトを試算する際のパラメーターは、IEA「World Energy Outlook 2021」、世界の⾃動⾞保有台数の推移とその構成(2℃未満/2℃/3℃)Energy Technology Perspectives 2017 Fig5.3 ,IEA, 2017、⻑期エネルギー需給⾒通しにおける省エネ⽬標「2030年エネルギーミックスにおける省エネ対策の現状と今後について」、太陽光の発電コスト(1.5℃)第6次エネルギー基本計画関連資料“2030年におけるエネルギー需給の⾒通し”(資源エネルギー庁,2021)、成⻑するグリーン産業[グリーン成⻑戦略](1.5℃)2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成⻑戦略(内閣府)などから設定。
  • ※2
    事務機器については、⾵⽔害などによるリース資産の毀損を想定し、保険などの活⽤を考慮して分析の実効性を精査した結果、気候変動における当社事業への影響は⼩さいとの判断のもとに定量化分析の対象外としました。

リスクと機会

リコーリースにとって気候変動に伴う移⾏リスク・機会の影響は、主に下表に⽰すとおりです。

気候変動に伴う移行リスク・機会の影響についての表
  • ※3
    短期:現在〜2025年、中期:2026年〜2030年、長期:2031年〜2050年
  • ※4
    大 :30億円超、中:1〜30億円、小:1億円未満
  • ※5
    BEV(Battery Electric Vehicle):電動車(EV)の種類の一つで、100%電気で走る電気自動車
  • ※6
    FCV(Fuel Cell Vehicle):燃料電池⾃動⾞のことであり、燃料電池内で⽔素と酸素の化学反応によって発電した電気エネルギーでモーターを回して⾛る⾃動⾞
  • ※7
    Nearly ZEB(Zero Energy Building):再⽣可能エネルギーを除き、基準⼀次エネルギー消費量から50%以上の⼀次エネルギー消費量を削減した建物(ZEB Ready)、かつ再⽣可能エネルギーを加えて、基準⼀次エネルギー消費量から75%以上100%未満の⼀次エネルギー消費量を削減した建物

当社事業への影響

シナリオ分析の結果、移⾏(1.5℃)および物理的(4℃)シナリオのいずれにおいても、気候変動がもたらす当社グループの事業に対する負の影響は短期ではおおむね限定的であるとの分析結果になりました。また、リスク影響よりも機会のほうがトータルでは⼤きいとの分析結果になり、1.5℃シナリオにおいては、売上および利益について増加が⾒込めることが分かりました。今後は、この分析結果を踏まえ、事業活動において機会の拡⼤を図り、中⻑期にわたって気候変動の負荷を軽減する取り組みを強化、推進していきます。

リスク管理

当社グループでは、重⼤な財務上の影響を把握するため、気候変動や⾃然災害リスクなどのリスク評価について、財務⾯での定義を内包した「経済的影響」と「発⽣頻度」の2軸で評価しています。また戦略上での影響については、経営会議において物理的リスク対策などを協議しています。これらのリスクは、「リスクマネジメント委員会」で管理されるとともに、気候変動対策については「サステナビリティ委員会」において検討がなされ、「経営会議」にて討議決定しています。同時に、『循環創造企業へ』という中⻑期ビジョンのもと機会を実現するため、中期経営計画において再⽣可能エネルギーの拡⼤による環境負荷低減と事業の拡⼤を⽬指しています。

指標と目標

当社グループは、SBTi※8における「1.5℃⽬標」を基準に、中⻑期のCO2排出量削減⽬標を設定しています。スコープ1、2について、CO2排出量ネットゼロの⽬標年を2050年から2030年に前倒ししました。2022年度のCO2排出量のうちスコープ2については、電気使⽤によるCO2排出量(510t-CO2)を「トラッキング付きFIT⾮化⽯証書※9」を活⽤することで、実質再⽣可能エネルギー化を実現しています。中期経営計画(2023〜2025年度)において、①環境分野への累計資⾦投下額を4,000億円、②再⽣可能エネルギー発電量を205,700MWh(2022年度実績:112,872MWh)、③EV取扱台数増加を⾮財務⽬標とすることで、環境課題の解決を⽬指しています。

  • ※8
    SBTi(Science Based Targets initiative):気候変動による世界の平均気温の上昇を産業⾰命前と⽐べ1.5℃に抑える削減⽬標を設定することを推進している協働イニシアチブ
  • ※9
    ⾮化⽯証書:⾮化⽯電源由来の電気が持つ環境価値を電気⾃体の価値と区別し証書化したもので、固定価格買取制度(FIT法)で認定された再⽣可能エネルギー電源に対する電源の特定や産地の情報を紐づけたものがトラッキング(追跡)付きFIT⾮化⽯証書と呼ばれる。