人権への取組み

基本的な考え方

人権は、すべての人間が持って生まれた権利であり普遍的な価値のひとつです。近年、人々の人権に対する意識の高まりを受け、企業活動におけるビジネスが人権に与える影響の大きさへ関心が強まっています。2015年9月国連で採択された「SDGs」(持続可能な開発目標)は、「誰一人取り残さない」という理念のもとに「世界の貧困をなくす」「持続可能な世界を実現する」ことを目指しており、17のゴールの根底にあるのは「人権」です。リコーリースグループでは、国際的人権規範(「国際人権章典」や「労働における基本原則および権利に関するILO宣言」 など)を準拠し、「リコーリースグループ行動規範」の実践において人権尊重に努め、持続可能な社会を目指します。

体制

リコーリースグループはリスクマネジメント・コンプライアンス推進体制のもと、人権リスクについてはサステナビリティ委員会が取り組みを行っています。

サステナビリティ委員会体制図

人権デューデリジェンスの実施

人権デューデリジェンスのプロセス

当社グループは、自社・グループ会社およびサプライヤー等における人権への負の影響を特定し、防止・軽減などを行う人権デューデリジェンスに取り組んでいます。当社グループの全事業を対象とし、以下の図に示すプロセスに沿って、事業活動を通じて与えうる人権への負の影響を特定・分析・評価し、優先的に取り組むべき人権リスクを特定しました。

人権デューデリジェンスのステップおよび人権への負の影響の特定・分析・評価のプロセス

人権デューデリジェンスのステップおよび人権への負の影響の特定・分析・評価のプロセス

人権への負の影響の特定・分析・評価

当社グループが関与している、または、関与し得る人権への負の影響を特定するために、「重大な事業領域の特定」、「負の影響の発生過程の特定」、「負の影響と企業の関わりの評価および優先順位付け」を行いました。

  1. 対象会社:リコーリース、テクノレント、エンプラス、Welfareすずらん
  2. 対象としたライツホルダー(企業が尊重すべき人権の主体):上記対象会社の社員およびサプライヤー・取引先の社員、顧客、事業に関連する地域社会の人々、投融資先企業の社員および顧客
  3. 特定・分析・評価プロセス
STEP1

重大な事業領域の特定

国連環境計画金融イニシアチブの人権ガイダンスツール、国連グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパンCSR調達セルフ・アセスメント質問表といった、国際的なガイダンス、ツール等を参考に、企業活動に伴い生じ得る一般的な人権リスクおよび業界、事業特有の人権リスクを整理しました。なお、今回はリコーリース、テクノレント、エンプラス、Welfareすずらんの所管する事業領域のうち、特定の事業領域のみを特定・分析・評価の対象とするのではなく、すべての事業領域を対象とし、STEP2以降のプロセスを実施しました。

STEP2

負の影響の発生過程の特定

リコーリースの各事業およびグループ会社の所管事業のバリューチェーンと関連するライツホルダーを整理し、また、リコーリースの各事業部およびグループ会社へのヒアリングを行い、所管事業に関連する人権リスクの有無や、バリューチェーン上のどこで人権リスクが実際に起こり得るかを確認しました。その結果を基に人権リスクとその発生状況、影響を被るライツホルダー、想定される人権への負の影響を整理しました。

STEP3

負の影響と企業の関わりの評価および優先順位付け

リコーリースの各事業部およびグループ会社を交えてワークショップを行い、下表に示す「人権への影響」と「企業とのつながり」の2つの基準に沿って人権リスクを評価しました。評価基準および評価を実施した主な人権リスクは以下のとおりです。

評価基準 評価基準の詳細
人権への影響 深刻度 人権リスクが実際に起こった際の、人権への負の影響の深刻さの程度を表す。以下3つの要素を考慮する。
1.規模:リスクが顕在化した際にどの程度の影響が出るか
2.範囲:影響を受ける可能性のある人数
3.救済困難度:影響を受ける人を、影響を受ける前または同等の状況に回復することができるかどうか
蓋然性 人権リスクが顕在化する可能性を表す。
企業とのつながり 以下2つの要素を考慮する。
1.自社との距離:企業が直接的に人権を侵害しているか、あるいは意図的または意図せず間接的に人権を侵害しているかを評価
2.自社との関係:企業が単独で人権侵害を行っているか、あるいは複数の企業の中の一つとして人権侵害を行っているかを評価

評価を実施した主な人権リスク(一部)

1

自社およびグループ会社の社員、およびサプライヤー企業の社員に関するリスク

強制労働、児童労働、結社の自由および団体交渉の権利、差別、健康と安全

2

顧客に関するリスク

商品・サービスの安全性、適切な表示・説明、商品・サービスに関わる差別

3

事業に関連する地域社会の人々に関するリスク

操業に係る地域住民の健康と安全、土地へのアクセス、賄賂と腐敗

4

投融資先企業の社員および顧客に関するリスク

投融資先企業における長時間労働の常態化、社会的弱者(子供、女性等)に対する不当な扱い

評価の結果、当社グループおよびグループ各社が優先的に取り組むべき「対策優先人権リスク」を下表のとおり特定しました。「グループ共通」に分類される人権リスクは、リコーリースグループが一体となって取り組むリスクです。
今後は、これらのリスクの対策を立案し、実施していきます。

「リコーリースグループ対策優先人権リスク」

対象会社 対策優先人権リスク 想定される負の影響 影響を被るステークホルダー
グループ共通 個人情報漏洩やプライバシーの侵害
  • 情報管理不備による個人情報漏洩およびプライバシーの侵害
自社グループ社員、顧客
カスタマーハラスメント
  • カスタマーハラスメントによる精神的苦痛
自社グループ社員
リコーリース 環境・気候変動への影響
  • 事業活動による環境破壊に起因する生命・身体への悪影響
地域社会
サプライヤーに関する人権リスク
  • サプライヤー・取引先における安全配慮不備や、大規模震災・パンデミック下での安全確保不備による生命・身体への悪影響
  • ハラスメントによる精神的苦痛
  • 情報管理不備による個人情報漏洩およびプライバシーの侵害
サプライヤー・取引先の社員
テクノレント 環境・気候変動への影響
  • レンタル物件輸送時のCO2排出対策不足による環境悪化に起因する生命・身体への悪影響
地域社会
強制労働(人身売買含む)
  • サプライヤー・取引先における、社員に本人の意思に反する就労や、離職の自由を制限する労働を行わせることによる、社員の隷属状態
  • サプライヤー・取引先における、社員に強制的な残業を行わせることによる、社員の隷属状態
サプライヤー・取引先の社員
エンプラス 人種、皮膚の色、宗教、政治的見解、(国民的・社会的)出身、障がいなどに基づく差別
  • 就業時における人種・国籍等に関する不適切な発言による精神的苦痛
  • 人種や出身地等の理由により応募者を不採用とすることによる、就業機会の損失
  • 宗教儀礼のためのお祈りの場や時間への無配慮による重度の精神的苦痛
  • 障がいへの合理的配慮を行わないことによる精神的苦痛
  • 人種・国籍等を理由とした昇進や昇給の不平等、解雇による金銭的損失
自社社員
外国人労働者
  • 外国人労働者への差別や、生命を脅かす行為による精神的苦痛、生命・身体への悪影響
  • パスポート取り上げによる隷属状態
  • 労働時間や賃金などに関する差別的取り扱いによる金銭的な損失
  • 技能実習生の採用にあたり、本人に採用に関する費用を負担させることによる、金銭的損失
サプライヤー・取引先の社員
Welfare
すずらん
健康と安全(健康)
  • ストレスや長時間労働による精神疾患、生命・身体への悪影響
  • 健康の保持増進の妨げによる生命・身体への悪影響
自社社員
外国人労働者
  • 外国人労働者への差別や、生命を脅かす行為による精神的苦痛、生命・身体への悪影響
  • パスポート取り上げによる隷属状態
  • 労働時間や賃金などに関する差別的取り扱いによる金銭的な損失
  • 技能実習生の採用にあたり、本人に採用に関する費用を負担させることによる、金銭的損失
自社社員
商品・サービスの安全性(製品の誤用含む)
  • 過度の行動抑制等の不適切なケアによる生命・身体への悪影響
顧客

人権の取り組み

リコーリースグループで働く社員の人権

当社グループは、社員の人権に配慮した職場環境を整えています。

1

社員の健康と安全および労働時間等の労働条件に関する権利

当社グループでは社員の健康が経営に直結すると考え、いきいきと働ける環境をつくるという基本姿勢のもと、「健康宣言」を発表し、健康経営を推進しています。また、勤務管理と連動した健康管理システムにより、勤務時間および残業時間等の管理を強化・徹底しています。

2

多様性の尊重と差別の禁止

当社グループでは、ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)は人財マネジメントの基本であると考え、性別、年齢、雇用形態、新卒・中途採用、障がいの有無、人種や国籍、ライフスタイル、宗教、性的志向・性自認などに関係なく多様な人財がいきいきと活躍できる職場環境づくりを進めています。

3

社員のキャリア育成

当社グループは「Happiness αt work(ハピネス アット ワーク)」を基盤として、事業成長と社員ハピネスの両方を実現するための人事戦略を展開しています。さらに、これまで培ってきた社員ハピネスを土台とし、今後は「変異」を起こす人財の育成と組織のエンパワーメント向上を掲げ各種施策を実施していきます。

取引を通じた人権の尊重

1

投融資における人権への配慮

当社グループは、「サステナビリティに対する考え方」に基づき、事業を通じて社会や環境の問題解決に貢献し、持続可能な社会の構築に積極的な役割を果たすことを目指しています。社会への負の影響が大きい事業や企業に関しては、投融資等を禁止または抑制します。

2

個人情報の保護

当社グループは、個人情報を提供されるすべての方々の個人情報を保護することが、個人情報取扱事業者としての重要な責務であると認識し、個人情報の保護に努めます。

3

グローバルに展開する企業の社員の皆様をサポート

当社グループのエンプラスでは、グローバルリロケーション事業を通じて社会のダイバーシティ&インクルージョンに貢献しています。詳細はエンプラス社ホームページをご覧ください。

人権に関する研修

当社グループでは人権に関する研修を以下のとおり実施しています。

コンプライアンス・e-ラーニング コンプライアンス知識の修得と意識の向上を目的に、毎年グループ全社員必須で実施。
ダイバーシティフォーラム ダイバーシティ&インクルージョンに関するその時々にあったテーマと外部講師を選定して、毎年1回希望者申込制でオンライン開催。後日、期間限定で動画配信も実施。
介護と仕事の両立セミナー 毎年1回希望者申込制でオンライン開催。後日、期間限定で動画配信も実施。
メンタルヘルス研修 毎年1回希望者申込制でオンライン開催。全社員対象のセルフケア研修と、管理職対象のラインケア研修の2コースを実施。

2023年度は上記に加えて、喫煙リスクに関する産業医講話の動画配信も行いました。

国連グローバル・コンパクトに署名

国連グローバル・コンパクト(UNGC)は、国連と民間(企業・団体)が手を結び、健全なグローバル社会を築くための世界最大のサステナビリティ イニシアチブです。当社は2022年7月に署名し、UNGCが掲げる4分野人権(「人権」・「労働」・「環境」・「腐敗防止」)に関わる10の原則に賛同し、その実現に向けて様々な取り組みを行っています。

UNGCのロゴ

救済システムの構築

内部通報制度

当社グループは、ハラスメントや就労問題など人権の尊重を含むコンプライアンス違反の早期発見、是正、再発防止を目的に、内部通報制度を設けています。また、全社員を対象に内部通報制度の周知・教育に努めています。