「リトレス」への社名変更は
自ら未来を切り拓くための決意表明
創業50周年という節目を迎える2026年、当社グループはこれまでの歩みを振り返るとともに、次の50年に向けた新たな一歩を踏み出そうとしています。1976年にリコー製品の販売支援を担うリース会社として誕生し、ベンダーリースという特徴的なビジネスモデルを起点に、お客様の設備投資や事業運営を金融面で支えながら、事業領域を広げてきました。リコーグループの一員として培ってきた信頼と、ベンダーとの強固なパートナーシップは、当社の大きな財産です。
その一方で、当社グループは今、次の50年に向けて自らの存在意義を見つめ直し、どのような価値を社会に提供していく会社なのかを、自らの言葉と実績で示していく局面に入ったと認識しています。変化のスピードがこれまで以上に速くなり、将来をただ待つのではなく、自らつくっていかなければならない時代です。これからの当社グループは「事業も手掛ける金融会社」から、金融会社として培ってきたDNAを大切にしながら、事業そのものを進化させていく「金融も手掛ける事業会社」へと変わっていく必要があると考えています。
その決意を明確に示すため、2026年12月に社名をリコーリース株式会社からリトレス株式会社(RITRES)へ変更します。社名変更は、名称を変えること自体が目的ではありません。これまでの延長線上に安住するのではなく、結果のすべてを自ら受け止め、自分たちの力で新しい価値を生み出していくという意志を、社内外にはっきり示すためのものです。
今回、「リコー」と「リース」を外したのは、その覚悟を形にするためです。もちろん、これはリコーグループとの関係を薄めるという意味ではありません。これまでリコーグループの一員として培ってきた価値観や事業基盤は、これからも継承していきます。その上で、リトレスとして自立した成長を目指し、自らの存在意義をより明確に社会へ示していきたいと考えています。
50周年という節目は、過去を振り返り、未来を描く機会に最もふさわしいタイミングでした。60周年、70周年と先送りすることもできたかもしれません。しかし、変革を進め、次の成長に踏み出すのであれば、この節目の年に意思を示すべきだと考えました。今後はリトレスとして実績を積み重ね、社名や事業領域ではなく、創出する価値によって認識される企業へと成長してまいります。
また、本年度は「みらくる座」(P.58参照)を通じて全国の社員との対話を進めています。社名変更や26-28中期経営計画(以下、現中計)に込めた想いを共有しながら、新しいリトレスの実現に向けて組織全体の意思統一を図っています。
ベンダーリースと中小企業支援を軸に
当社の独自性をさらに磨き込む
社名はリトレスに変わりますが、当社が果たすべき役割は変わりません。中小企業のさまざまな困りごとに寄り添い、設備投資のハードルを下げ、事業を前に進める支えになること。これは創業以来、当社が一貫して担ってきた役割であり、これからも変わることのない軸です。
また本年度は、大きな節目に合わせて理念体系を刷新しました。私たちが大切にする価値観や目指す姿を改めて整理し、次の50年に向けた成長の土台を整えています。
2026年に刷新した中長期ビジョンでは、10年後の目指す姿として「リースの可能性を広げ、中小企業を支える基盤へ」を掲げました。昨今は規模の拡大や効率性を重視する動きが強まっていますが、当社グループでは効率性を高めながら、ベンダーリースと中小企業支援という軸をしっかりと守り、その先にある事業の可能性を広げていくことが、当社グループらしい成長の姿だと考えています。
当社の強みをひと言で言えば、「中小企業の見過ごされがちな金融ニーズに徹底して寄り添う現場力」です。多くのベンダーと直接対話し、お客様の困りごとを一緒に見つけ、「当社ならこうできます」と提案し、改善を重ねてきた歴史があります。その積み重ねによって培われた知見やノウハウが、当社グループの運営品質と独自性を支えています。
私は、こうした積み重ねこそが競争優位の源泉だと考えています。表面的な仕組みだけを真似しても、ベンダーとの継続的な接点のなかで蓄積されてきた改善力や、そこから生まれる提案力、現場対応力までは簡単に再現できません。だからこそ、当社グループはリース業界において独自の立ち位置を築くことができてきたと思います。
今後はこの強みをさらに磨き込み、「ベンダーリースダントツNo1」を目指します。ここでいう「ダントツ」とは、単に件数や規模で上回ることではありません。ベンダーや中小企業にとって、最初に相談され、最も深く課題解決に入り込み、最も信頼される存在になることです。その意味を社員一人ひとりが自身の仕事に照らして考え、行動していくことで、当社グループの競争優位性はさらに高まっていくはずです。
23-25中期経営計画で見えた成果と課題を踏まえ
次の成長に向けた構造転換を進める
23-25中期経営計画では、周辺領域への展開を進めながら収益力の強化に取り組み、当社の「稼ぐ力」を着実に高めることができました。BPO分野の集金代行では、新規顧客の獲得や、学校向け集金代行サービス「スクールコレクト」の全国の学校への導入増に伴って、業績・取扱件数ともに順調に推移しました。介護報酬ファクタリングについても、資金調達の手段の一つとしてのニーズの広がりをとらえ、新規顧客の獲得と再契約の増加につながっています。不動産分野でも、信託受益権や融資を中心に差引利益が増加しました。
その結果、2025年度は増収減益となったものの、営業資産は1兆2,832億円※まで拡大し、売上高・売上総利益は過去最高を更新しました。営業利益・経常利益についても単年度の期初業績計画を達成しています。
しかしながら、営業利益が減益となった要因は主に二点です。一点目は、金利上昇による資金原価の増加です。金利上昇に伴い、価格転嫁を進めていますが、リース事業の特性上、それが業績に反映されるまでには一定のリードタイムがあり、2025年度は資金原価の増加が先行しました。
二点目は、将来の成長に向けて人財・IT投資を進めたためです。営業利益は減益ではありますが、資産利回りの改善を進めつつ、営業資産を積み上げており、当社の稼ぐ力は着実に向上できているものと認識しています。
成果が見られた一方で、成長に向けた課題も明確になりました。当社の中核であるベンダーリースについて、「どのように付加価値を高め、競争優位をさらに強固なものにしていくのか。また、人財への投資を現場の提案力や成果にどのようにつなげていくのか。さらに、多角化した事業にどのような役割を持たせ、全体として企業価値向上につなげていくのか。」こうした点は、次の成長に向けて取り組むべき重要なテーマだと認識しています。
当社グループは、26-28中計と29-31中計を合わせた6年間を、持続的な成長に向けた「変革期」と位置づけ、その前半となる26-28中計では、こうした課題に正面から向き合います。ベンダーリースの付加価値向上と競争優位の強化、人財投資の成果創出に加え、各事業の役割を明確化し、全体最適の観点から再構築を進めています。また、価格転嫁のスピード向上や資本効率を意識した事業運営を徹底することで、外部環境の変化にも耐えうる収益構造への転換を図っていきます。
- ※リース債権流動化を控除しない残高を表示
事業セグメントの再整理で
各事業領域の資本収益性を明確化
前述した中長期ビジョン「リースの可能性を広げ、中小企業を支える基盤へ」の実現に向け、現中計では事業セグメントの再整理を進めました。この起点には「中小企業のニーズに徹底して寄り添う現場力」という当社グループの強みがあります。
今日では、利益の絶対額だけを見ればよい時代ではありません。どの事業がどのように利益を生み出し、そのために投入した資本がどの程度の成果を上げているのか、ROEやROICをはじめとする指標を通じて資本効率と企業価値向上の道筋を示すことがこれまで以上に求められています。私たちは、企業価値向上を実現するためには、各事業の役割と資本収益性をより明確にしていく必要があると考えました。
こうした考えのもと現中計では「ベンダー&カスタマーソリューション事業」「BPO&サービス事業」「環境・不動産事業」の3領域に再編しました。
個別に見ていくと、「ベンダー&カスタマーソリューション事業」は、今後の中核事業領域として、現在の事業性を確保しながらどう成長させていくかを考えていきます。同時に競争優位性を高めることに注力していきます。ここはオーガニックに成長する上での一丁目一番地となる領域と位置づけています。
「BPO&サービス事業」はアセットを使わない事業領域だけに、現在の資本効率性を維持しながら受注量を増やし、さらなる対応のスピードアップを図ります。ここは将来の収益拡張領域として、当社の事業構造を少しずつ変えていく役割を担う領域です。
「環境・不動産事業」は事業機会が多い領域であり、実際に受注・取引量だけであればさらに増やすことも可能です。しかし、それでは資本収益性が下がるため、資本収益性を上げる方向に舵を切っています。ここは量の拡大というより、全社ポートフォリオの質を高めていく役割を持つ領域です。
そして、この事業構造の変革を実際に進めていく上で欠かせないのが、人財とITへの投資です。各事業の役割を明確にしただけでは企業価値は高まりません。それを現場で形にし、新たな収益機会をとらえ、継続的に稼ぐ力に変えていく人財と仕組みがあってこそ、最適な事業ポートフォリオを実現できるものと考えています。
成長と分配の好循環をつくり
持続的な企業価値向上につなげる
現在、当社では「成長と分配の好循環」を重視した経営を進めています。その根底にあるのが、適正分配経営という考え方です。これは、株主還元を抑えて人財やシステムへの投資を優先するということではありません。付加価値の増大を目指し、持続的な稼ぐ力と企業価値向上につなげていくために、成長投資と株主還元をどう適切に両立させるかという考え方です。
企業が将来にわたり継続的に利益を生み出していくためには、目先の利益水準だけでなく、稼いだ付加価値をどこにどう振り向けるかが重要です。当社は、短期的な利益の最大化だけを追うのではなく、将来の成長を支える投資を着実に行いながら、株主の皆様への還元にも継続的に応えていくことで、成長と分配の両立を図っていきたいと考えます。
その成長投資の中心となるのが人財とAI・ITです。私は、当社グループの競争優位の源泉は、お客様やベンダーに寄り添いながら課題解決を支えてきた現場力にあると考えています。その強みをさらに磨くため、当社では高難易度資格取得支援やAI人財育成を強化しています。資格取得に対する報奨制度や学習支援制度を整備し、年間約300人程度が学びの機会を活用していくことを目指しています。こうした取り組みを通じて、一人ひとりの専門性を高め、お客様に提供できる価値そのものを高めていきたいと考えています。
また、AI導入は、業務効率化の目的だけではありません。中小企業を取り巻く環境変化や新たなニーズをとらえ、新しい価値や事業機会を生み出していくための重要なテーマです。人財とAI・ITへの投資を通じて、お客様の課題をより深く理解し、より高い付加価値を提供できる組織へと進化していきます。
さらに、「ベンダーリースダントツNo1」の実現に向け、「転勤・地域勤務手当」の導入など、全国各地で社員が安心して活躍できる環境を整え、営業ネットワークの強化を進めています。
私は、企業価値を生み出すのは制度そのものではなく、それを活用してお客様に向き合う一人ひとりの社員だと考えています。だからこそ、安心して挑戦し、成長できる環境づくりに継続的に投資していきます。
加えて、当社は成長投資だけでなく、株主還元にも明確に取り組んでいきます。財務レバレッジの適正水準化を目的に2026年度より6年間の特別配当を実施し、2026年度の年間配当は前年度から71円増配の256円を予定しています。成長投資と累進配当を基本とした株主還元への適正分配を通じて、持続的な事業成長と適正な資本構成に基づく安定的な株主還元の両立を目指します。
当社が目指しているのは、将来の付加価値の原資を増やし、持続的な企業価値向上につなげていくことです。その実現に向けて、成長投資と株主還元を適切に両立させ、まずはこの6年間で投資と分配の土台を築いていきます。その成果として、2032年度以降には稼ぐ力の向上をより明確に示していきたいと考えています。
人財やAI・ITへの投資を通じて持続的な成長基盤をつくり、その果実を株主の皆様にも着実に還元していく。そうした成長と分配の好循環を実現していきます。
新しい会社の動力源となるのは
挑戦を恐れない「誠実な異端人財」
当社の将来を担う人物像は、「誠実な異端人財」です。現中計の求める人物像としています。その意味は、誠実さと協働性を大事にしながら、変異を必然ととらえて既存の型や慣習を疑い、変革を自律的に推進できる人財です。
先ほど述べたように、当社が成長と分配の好循環を真に機能させていくためには、人財投資を単なる教育施策で終わらせず、実際の事業変革や収益力向上につなげていく必要があります。その意味で、どのような人財がこれからのリトレスを支えるのかを明確にすることは極めて重要です。
当社には従前から真面目でコツコツという文化が浸透しており、そういう人財が集まっていることが特徴であり強みです。一方で、もう少しガツガツした人財であってもいいという想いから、「誠実な異端人財」というユニークな表現を使いました。
一つの寓話に、「コップに蓋をすると、ノミはやがてその高さまでしか跳ばなくなる」という話があります。本来はもっと高く跳べるはずでも、一度限界を経験すると、その制約がなくなった後も、自らその高さを超えようとしなくなるという教訓です。会社も同じで、蓋をしてしまうと、人はその範囲でしか力を発揮しなくなります。だからこそ、蓋を外し、個人がやれることを増やし、異なるタイプの人財が入ってきても成長できる状態をつくりたいと考えています。
当社はこれまで、働きやすく、互いを尊重し合う企業文化を大切に育んできました。これは、今後も失ってはならない当社の強みです。一方で、その心地よさが、時として無難な選択や、角の立たない発想にとどまる風土につながっていた面も否定できません。私は以前から、そこに少なからぬ危機感を抱いていました。今回の変革を通じて、当社が大切にしてきた誠実さを土台にしながらも、挑戦を恐れず、自ら変化を起こせる人財が育ち、これからの当社グループの成長を担っていくことを期待しています。
一人ひとりが覚悟を持って未来を切り拓き
リトレスの変異と成長を形にしていく
2026年は、当社グループにとって大きな転換点となる年です。創業50周年という節目を迎え、社名変更、中長期ビジョンの刷新、現中計のスタートなど、次の成長に向けたさまざまな変革を進めています。だからこそ、株主・投資家、アナリストの皆様をはじめ、資本市場に対する説明責任をしっかりと果たしていく必要があると考えています。株主総会や統合報告書などを通じて、私たちが何を目指し、どのような時間軸で企業価値向上を実現していくのかを引き続き積極的に発信していきます。
重要なテーマの一つが、成長と分配の好循環を確実に機能させることです。当社グループが生み出した利益を人財・AI・ITへの投資と株主還元に適正に分配し、株主の皆様の期待にも持続的に応えていく。その上で、オーガニックな成長によって稼ぐ力を高めるとともに、インオーガニックな成長の可能性も追求していきます。こうした成長を実現するために、私は先頭に立って変革を進め、社員一人ひとりの挑戦を後押ししながら、ともに未来を切り拓いていきます。
当社には、創業以来50年にわたり中小企業を支え続けてきた実績と、お客様からの信頼があります。そのDNAを受け継ぎながら、これからも変異と成長を続ける新しいリトレスとして、新たな価値創造に挑戦し続けてまいります。
ステークホルダーの皆様には、ぜひこれからのリトレスにご期待いただきたいと思います。